研究分野変更からの大学院留学

英語嫌いが分野変更して大学院に留学しました

【大学院留学】研究分野を変更して2回目の米国大学院出願

はじめに

初めまして。resatomoです。日本で大学、大学院を卒業後、米国大学院に出願した経験を共有するため、このブログを始めようと思います。私は一般的に米国大学院を受験する方と比べてかなり要領が悪い(相当なマイペース)と思います。例えば、大学受験に一度、そして米国大学院受験に一度、計2年間浪人生活をしました。さらに、大学院受験に一度失敗した後もTOEFLの90点を超すことができませんでした。。。

しかし、このような私でも今年米国大学院に合格することが出来ました。私が米国の大学院を目指す間に、「私なんかがアメリカの大学院なんか受かるわけないだろう」と何度も思いました。船井奨学金に採択された方の経歴や留学体験記を見ては自分には無理だなと落ち込んでいました笑。それでも、やはりアメリカの大学院に行きたいという気持ちを捨てきることはできず、結果的に2回出願することになりましたが、合格することができました。

米国大学院留学を目指すにあたって、高尚な理由がなくても全然いいと思います。アメリカで研究したい!学位をとりたい!面白そう!という気持ちがあれば、ぜひ大学院留学を1つの選択しとして持ってほしいです。留学する理由は出願に向けてどんどん後付けしていけばいいと思います。そして、このブログを見て、少しでも米国大学院にある意味気軽に?目指してくれる方が増えてくれると大変うれしく思います。

また、私は日本の大学・大学院ではソフトマター・光学を研究し、米国の出願時には神経科学・神経工学に分野を大きく変えました。分野を変更して院留学する方はまだまだ少ないのではないかと思います。最近では海外の大学院の受験体験記に関するブログもたくさんあります。

しかし、このブログでは分野を変更してからの大学院留学に対して私が行ってきた準備について、また、私自身が初心を思い返せるように当時の気持ちなども書いていきたいと思います。それゆえ、一般的な米国大学院出願の説明については他のブログや書籍に説明を譲り、このブログではテストスコアが低く、分野を変更するという風変わりな大学院留学について書きたいと思います。

実は2回目の出願でも私は落ちまくったのであまり成績をさらしたくはないですが、私はこの留学の準備で先生方や友人、家族などの多くの方々に迷惑をかけ、そして助けられました。その方々への感謝の気持ちも込めて、今後出願する方の力に少しでもなれればと思い、出願時の状況を書き残すつもりです。大学院留学中の様子もいつか書ければいいなと思います。

以下の記事も出願過程をまとめているので、確認してみてください。

大学院の探し方や研究室の探し方

奨学金の出願や研究計画の作成

奨学金の面接

全落ちを避けるために

 

 

受験時の所属、スコア、成績などについて

・日本の大学、大学院での専攻 電気電子情報工学

・日本の大学、大学院時代の研究分野 ソフトマター・光学

・米国での志望分野 神経科学・神経工学

・2017年 工学学士、2019年 工学修士取得

・2019年~2020年 所属していた研究室で研究員としてソフトマター研究を継続

・GPA学部3.4/4.0 修士3.5/4.0

・学部時代成績優秀者として表彰

・2回目の米国大学院出願のための海外留学奨学金取得

・2回目の米国大学院出願までに筆頭著者論文1本共著2本(ソフトマター分野)

・留学経験なし

 

〇1年目のTEST SCORE

TOEFL Reading 22, Listening 15, Speaking 15, Writing 20, TOTAL 72

GRE Verval 136, Quantitative 163, Writing 3.0 

〇2年目のTEST SCORE

TOEFL Reading 24, Listening 21, Speaking 17, Writing 22, TOTAL 84

    MyBestScore 87 (Reading 25, Listening 23) ※

GRE Verval 146, Quantitative 164, Writing 3.0

 

1年目に関しては、それは落ちるよねというスコアですね笑。正直記念受験でした。2年目も大学院留学をする方にとってはかなり低いスコアだと思います。これで合格できたのは、やはり2年目に奨学金をゲットできたことが一番大きかったと思います。

修士取得後は、所属していた研究室で雇用していただき、週2回ほどのペースでソフトマター・光学の研究を続けさせていただきました。残りの時間は英語の勉強に当てました。7月には論文がアクセプトされました。

まず、なぜ大学院留学をしようと思ったのか、なぜ神経科学・工学の研究にテーマを変えることにしました。この経緯についてまず書くことにします。テストや奨学金のことなどはまた後日書きます。

※2019年の途中からTOEFLを運営するETSはTOEFL各セクションの最高点をMyBestScoreとして提示してくれるようになりました。このMyBestScoreをTOEFLの点数として受け付けてくれる大学もあるため、もし大学のHPに明記されていない場合は早めに問い合わせることをお勧めします。MyBestScoreを認めるか否かでTOEFL対策の仕方が大きく変わると思います。

 

なぜ大学院留学を思い立ったか

〇大学院留学を知る

今思い返してみると、初めに大学院留学の選択肢があることを知ったのは、学部1年次に所属していたボランティアサークルの打ち上げのときでした、サークルOBかつ某大学の先生とお話しをする機会があり、そのとき「博士課程に進むことも将来の選択肢として考えている。」と言った私に対して、「どうせ博士課程に行くなら海外に行きなよ。」と先生にお勧めされたのが私が大学院留学について知るきっかけとなりました。

もともと、新しいことや変わったことが好きな私はすぐに「大学院留学って面白そう!」と思い、留学について調べ始め、2年生のころは大学院留学説明会にも参加しました。今思えば、あの打ち上げの場にいなかったら私は留学をしていなかったのかもしれません。

しかし、当時は研究について何も知らない学部生時代。研究って面白いのか、自分に研究者は向いている職業なのかなど全然分からず、いきなり大学院留学を将来の目標にして研究者としての人生を歩んでいくことには抵抗がありました。とは言うものの、実際に大学院に出願することになったときに、成績が悪いという理由だけで大学院留学を諦めないといけなくなるのは避けたいと思い、悪い成績を取ることは避けるように努力しました。なんとか、足切りを受けるような成績になることは避けることが出来ました。

 

〇大学での研究と介助士としての経験

学部4年次には、特に研究したいテーマもなかったため、指導体制が整っていて、学生が学術論文を積極的に投稿している研究室を選ぶことにしました。結果、私はソフトマターや光学に関する研究をすることになります。これが全然面白くありませんでした笑。自分にとって興味を持てない分野で、面白くないので研究も全く進みません。テーマがかなり基礎研究よりだったことも私の研究嫌いに拍車をかけたように思います。

卒論は本当に大変で、卒業時点ではこれから研究一筋でやっていこうという気持ちには到底なれませんでした。こうして、学部4年次で出願し大学院留学をする道は諦めることになりました。しかし、もともと1年ぽっちでは研究の面白みは分からないだろうと考えていたため、そのまま大学院に進みました。

大学院では少しずつ研究の要領を掴み始め、徐々に研究を面白いと思えるようになって来ました。分からないことに対してどのように実験するか、どのように実験結果を読み解くかを考えることは楽しかったです。最終的に上手く現象を説明できたときは非常にうれしかったことを覚えています。このあたり、おそらく修士の2年始めあたりで改めて海外の大学院進学を考えるようになりました。

しかし、このままソフトマターの分野で研究を続けることには迷いがありました。研究が基礎研究に寄り過ぎていて、自分が社会に貢献できているかどうかが実感しづらかったのが原因だと思います。

また多くの工学研究は世の中を便利にすることを目的としていると思いますが、今でさえ十分と言っていいほど便利なのに、これ以上世界を便利にする必要はあるのかという気持ちがありました。もっと生活に不自由を感じている方を幸せにできるような研究があるのであれば、そちらをした方が自分には向いているのではないかと考えるようになりました。(決して世の中を便利にする研究を否定しているわけではありません。あくまで私にとって)

また、私は大学1年次から週1くらいのペースで四肢麻痺の方の訪問介助に従事してきました。首から下を自由に動かすことができない方の介助を行ってきて、障がいのある方の生活の大変さ、そしてそれを介助する介助士の仕事のきつさの両方を知りました。

研究分野を変えようかと悩んでいた修士2年の春ごろ、介助士の仕事を5年間続けてきた自分にしかできない、気付けない研究があるのではないかと考えるようになり、研究分野を神経科学や神経工学の分野に変えて米国大学院を目指すことにしました。

 

出願・準備スケジュール

アメリカ大学院の出願のためには

TOEFLGREのMinimumスコア

・志望理由書(Statement of PurposeやPersonal Statement)

が必要で、合格可能性を上げるためには

・筆頭著者の論文

・外部奨学金

・高いGPA

が必要です。奨学金や論文、好成績がなくても、他にアピールポイントがあれば合格する可能性は十分にあると言われています。

私が調べた限り工学系ではTOEFLのスコアが80点でも数校は有名校に出せる可能性はあります。しかし、ほとんどの学校は90点を求めてくるので、90点以上を目指したほうが吉です。アイビーリーグなどの誰でも知っているような多くの学校は100点を求めてきたように思います。

GREのスコアにMinimumを求めてくる学校は少ないですが、ないこともありません。一般的にVerval 150、Quantitative170を目指し、TOTAL 320を目指す方が多いと思います。GREの提出を求めない学校もあります。

 

私の2回目の出願時の出願準備プロセスは以下のようになります。

  準備期間 メモ
TOEFL ~12月1日 12月1日最終受験。結局5月11日のスコアを提出 笑
GRE ~11月8日 受験日11月8日で10日くらい対策した
前年もこのくらいの時期に1週間くらい対策してい一度受験
研究 ずっと 基本的にはソフトマターの研究を続けた
7月に論文が受理された
奨学金書類作成・出願 8月上旬~9月下旬 神経科学・工学関連の論文、書籍を読み2~3週間くらい準備
奨学金面接 10月下旬~11月上旬  
志望理由書(SOP)作成 11月下旬から12月中旬 前年のSOPをもとに肉付けした
出願 12月1日~16日  
合格発表 2月~  

 

 

受験した大学院

受験した大学院(1回目) 学部 メールの返事 その他 合否 合否連絡日
University of Washington Bioengineering   × 2019/2/7
University of Pittsburgh Bioengineering ×   × 連絡なし
University of Florida Biomedical Engineering 修士課程オファー × 2019/3/22
University of Southern California Biomedical Engineering インタビュー(出願前)  × 2019/5/4

 

受験した大学院(2回目) 学部 メールの返事 その他 合否 合否連絡日
University of Michigan  Biomedical engineering ×   × 2020/4/14
University of Washington Electrical and Computer Engineering 2020年7月10日に研究室訪問 2020/2/5
University of Washington Bioengineering   × 2020/2/5
University of Pittsburgh Bioengineering   × 連絡なし
University of Florida Biomedical Engineering インタビュー辞退 × 2020/4/14
University of Southern California Electrical and Computer Engineering ×   × 2020/4/12
University of California San Diego Electrical and Computer Engineering ×      
University of California Santa Barbara Electrical and Computer Engineering インタビュー辞退    

 

こうして並べてみると合格できたのは本当に運がよかったと思います。2回目も散々ですが、奨学金の効果もあったのかインタビューの申し入れもいくつかありました。UM、Pitts、UWが第一志望群だったので、UWからの合格を頂けた時点でインタビューは辞退しました。また、Pittsでは2人の教授からメールの返信を頂けましたが、今年は大学院生を取る予定はないとのことで、合格は難しくなったと思います。

UCSDとUCSBの研究室は直前に見つけたため、ぎりぎりで出願しました。志望理由書(SOP)もグダグダになったように思いましたが、それでもUCSBの研究室は私に興味を持ってくれたため、全落ちしたくない方はぎりぎりになったとしても、できる限り多くの研究室に出願した方がいいと思います。

UFは滑り止めのつもりで受けました。奨学金取得後メールを送った時点でかなり食いつきは良かったのと1回目の出願でMasterコースに合格できていたので、UFは合格できそうだなと思っていました。落ちましたが笑。

 

実際に受験をして思ったこと

〇論文と奨学金があればテストスコアがMinimumに到達していなくても可能性あり

テストスコア、論文、奨学金の1つが欠けていても、どこかの大学院には合格できるかもしれません。事実、私はテストスコアが全然ダメでした。

出願においては、論文を書いていて研究の立案から論文執筆までの一連の流れを学んでいること、奨学金を取得していてたとえ新しい分野でも研究計画を立てる能力があることをアピールしました。

ちなみにUW ECEのMinimumは92で、私は84なのに合格できました。

 

〇若い先生は比較的コンタクトを取りやすい

Assistant Professorなどの若い先生は比較的メールを返信していただけます。分野を変更する場合は若い先生をメインにコンタクトを取るのがいいのではないかと思います。多くの若い先生は入試の選考過程に関わっていないと思いますが、その先生がAdmission committeeの先生に個人的に連絡を取ってく優遇してくれるかもしれません。

University of WashingtonのECEでは、出願時に研究したい分野の第一希望と第二希望を選び、まず、第一希望のFacultyによって審査され、第2ラウンドとして第二希望のFacultyに審査されます。これは大学のHPのFAQsページに明確に記述されています。後日私の指導教官となる予定の先生とお話ししたところ、私の出願書類を審査したと伺いました。

Assistant Professorなどの若い先生とコンタクトを取ることも無駄ではないと思います。ただし、大学や学部によってやはり事情は変わってくると思います。

 

〇興味のある研究室を訪問する

英語が苦手な人は会って話すことが本当に恐ろしいと思いますが、現地で会った方が聞き取りやすいし、話しやすいです。私の場合実際に訪問したのはUWだけでしたが、合格をもらえたのも4月23日時点でUWだけです。他の留学記に記されているように実際に会っていたことが選考に有利にはたらいた可能性は高いです。

英語力に難があることは重々承知していたので、パワーポイントで資料を作成してお話ししました。2人で座りながら、パソコンの画面を見ながらの発表でした。私が今まで取り組んできたソフトマターの研究を簡単に説明した後、その先生が関わってきた論文を自分なりに勉強したことについてもまとめて発表しました。最後にその研究室で取り組みたいことを話しました。その研究室の論文を発表したのは、異分野だけど本気でその研究室に興味があり、研究意欲があることのアピールです。また、私が取り組みたい研究内容については興味を示していただいたように思います。

実はこの部分が一番心配していたところでした。私にとって研究してみたいと思った内容が、その分野で行うに値することなのか、学術的に面白いことなのかが異分野の私にはあまり分かりませんでした。この研究室訪問で自分のやりたい研究がその分野でやるに値するものだと自覚することができ、その後奨学金の出願時に研究計画を執筆するときに自信を持って書くことができました。

ちなみに、研究室訪問時の英語力はListening21、Speaking17で双方向のコミュニケーションは思うようにいきません。私のように英語力が低くても、十分に準備した上でがむしゃらに突っ込んでみるのもありだと思います。

 

〇大学ごとに志望理由書を変えるのは大変

分野を変更する場合、研究計画の応用を利かせることが難しいです。私は第一志望のUWでできるような研究計画を作り込み、奨学金出願時に提出しました。

しかし、全く同じ研究を行っている研究室なんてありません。そのため、他の大学の志望理由書を書くときに、その大学に合わせて研究計画を変えるのが大変でした。無理やりUW用に準備した研究計画を他の大学に書き換えましたが、おそらくプロが読んだら、容易にその稚拙さが分かったのだろうと思います。

奨学金を取ったからと安心せずに論文などでその分野のトレンド等の情報を収集し続けて、他の大学での研究計画に深みを持たせられるようにすべきでした。

 

〇出来る限り自分のバックグラウンドに近い専攻で出願する

2回目の出願まで、私がしたい研究は主にBioengineeringやBiomedical Engineeringに入っていると思っていました。しかし、詳しく調べてみるとElectrical and Computer Engineeringにも多くの研究室があると分かり、2回目の出願ではECEも多めに出願しました。

私の日本での研究分野はソフトマターでしたが、専攻は電気電子情報工学でした。バックグラウンドを考慮すると私の場合はECEに出願した方が評価してもらいやすかっただろうなと思います。研究室によっては多くの部門からの出願を受け付けていることがあります。

例えば、私が行く予定の研究室はBioengineeirng、Electrical and Computer Engineering、Neuroscienceから入ることができます。3つとも出願できるのであれば、3つとも出願すべきです。

もしどれか1つだけにしか出願できないのであれば、自分のバックグラウンドに一番近いところから出願すべきと思います。

 

〇Masterコースにも出願する

基本的にPh.Dコースの倍率は高いので、Masterコースにも出願するといいと思います。私もUW、UCSD、UFのMasterに出願しています。

ただし、Masterコースの多くは学費が自費となります。州立の学校で学費は300万程度かかり、生活費もあわせると500万ほどになってしまいます。親に出してもらえるか、貯金があるか、奨学金を持っている場合は出願したらいいと思います。

Ph.Dコース用の奨学金でもPh.Dコースに後々進むことを条件にMasterコースへの出願を認める場合もあるので確認してください。

また、実際の出願時においては、Ph.Dコースに出願すると自動的にMasterコースも審査される場合と、別々に応募しなければならないときがあるので確認してください。

 

〇日本の大学院でまず経験を積むORその分野のインターンシップ等を探す

やはり日本で学んで論文を書いてから出願した方が、教授のコネが使えるかもしれませんし、心労も少なくすみます。また、留学してからもその分野の基本的な知識を知っているので楽なのではないかと思います。もしまだ日本の大学院受験のために勉強をする時間があり金銭的な余裕があるなら受験をお勧めします。

また、行きたい分野でリサーチインターンシップや技術補佐員などのアルバイトに応募するのも手かもしれません。海外大学ではリサーチインターンできることもあるようです。また、OISTでもリサーチインターンシップができます。ただし、応募期間が決まっていたりするので注意が必要です。

技術補佐員などのアルバイトは大学や理研が結構募集しています。私は少しでも実験技術を身につけようと、理研の技術補佐員に応募しようとしましたが、最低1年は働いてほしいと言われ断られました。